第363章

 望月琛は山下清音に視線を向けることすらせず、ただ冷淡に言い放つ。

「そのアシスタントに処置させればいい」

 言い捨てるや否や、彼は大股で前を行く視察団の後を追う。山下清音の茶番になど、足を止める価値も見出していないようだ。

 その背中を追っていた大谷森は、ふと考えた様子で足を止めると、慌てて鞄から携帯用の救急セットを取り出した。

 彼は絆創膏を一枚取り出し、職業的な笑みを浮かべて山下清音に差し出す。

「山下さん、とりあえずこれで手当てを」

 山下清音は大谷森をきつく睨みつけた。せっかくの好機を邪魔されたと言わんばかりの非難が目に宿っている。それでも、彼女は極めて不承不承といった...

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